ポジションの調整

 ロードバイクに乗り慣れてくるとポジションも少しずつ変わってきます。最初は前傾があまりキツくなりすぎないようにアップライド気味のセッティングをしますが、段々と体幹も鍛えられてくるとリラックスして今までより深い前傾姿勢をキープできるようになってきます。速く走るためには空気抵抗の少ない前傾姿勢を維持する必要がありますので、ハンドル位置を下げたり、ペダリング効率が良くなるようにサドルやクリート位置のセッティング重要になってきます。

 ただ難しいのは、ポジションのセッティングに絶対的な正解・不正解がないのでその人にとってのベストポジションを出すためにはある程度の試行錯誤が必要なのです。プロ選手を見てみても、実にいろいろなセッティングをしています。一見セオリーから外れた特殊なポジションであっても、その選手にとってそれが一番速く(楽に)走れるのであればそれはそれでいいのです。体型や寸法を計測して数値化された適正ポジションは、あくまで統計学的なデータをもとにした平均値なので必ずしも万人にはあてはまりません。

 ここではとりあえずある程度基本にもとづいた簡単な合わせ方を中心に説明します。これを参考に試行錯誤してみてください。

サドル位置のセッティング

 サドル位置のセッティングには3つの要素があります。サドルの高さ・角度・前後位置です。まず高さの簡単な合わせ方として、ペダルに踵を乗せて下死点(シートチューブ延長上のサドルから一番遠い所)でちょうど膝が伸びきる高さにするやり方があります。他には股下寸法x0.88(諸説あり)という公式のようなものもあるが、あくまで目安です。

 次にサドルの角度は一般的には地面に対してサドル上面を水平にします。乗っていて痛みが出たり、お尻がすぐ動いてしまう場合は多少角度(前上がりもしくは前下がり)をつけてみます。

 最後にサドルの前後位置です。サドルの前方に座ったときと後方に座ったときでは、ペダリングのしやすさが変わってくると思います。足を回しやすい(力の入りやすい)位置がベストポジションです。よく言われる合わせ方のひとつで、「クランクを地面と水平にしたときに、前に出ているほうの足の膝蓋骨の内側がペダル軸中心の垂直線上にくる位置」というのがあります。ハンドルが遠い(あるいは近い)からといってサドルの前後位置で無理やり合わせるのはあまりオススメしません。

ハンドル周りのセッティング

 サドル位置がおおよそ固まったら、次はハンドル周りのセッティングです。今までに乗っていてハンドル(ブラケットポジション)が遠いのか近いのか、高いのか低いのか、ご自身の感覚(フィーリング)が頼りになります。ブラケットポジションの時と、下ハン握った時と 持ち比べてみてください。特に違和感がなければ無理に変える必要はありません。

 まずはハンドルのクランプ部分を緩めて角度を微調整してみましょう。ハンドルの角度をおくったり、しゃくったりするだけでブラケットの握りやすさや上体の姿勢なんかも変わってきます。ハンドルの高さは、完成車の場合は一番高い状態になっているので下げる方向の調整が出来ます。どうしても上げたい場合はステムを上下逆さに取り付けることで対応できます(アヘッドステムの場合)。<参照>

 ハンドルをもっと遠くしたい(近くしたい)場合はステムを交換します。10mm刻みで50mm~140mmの長さがありますが、極端に変わるとハンドリングにも影響がでるので、まずは10mmか20mmくらい違う長さを選ぶといいでしょう。また、ハンドルの形状でもリーチは変わりますので、レバーの握りなどにも不満があるのであればハンドルを替えるのも一つの手です。最近はショートリーチでドロップの浅い「コンパクトハンドル」が小柄な方や手の小さい方などに人気があります。

クリート位置のセッティング

 ロードバイクに慣れてきた方はビンディングペダルを使っていると思いますが(まだの方はまずはシューズとペダルを!)、クリートの位置というのがなかなか難しいところだと思います。そもそもビンディングペダルの最大のメリットは、ペダルに対する足の位置をミリ単位で調整・固定できるという点ですから、位置が合っていないと意味がありません。

 基本的な合わせ方は足の裏の「母子球」「小子球」を結んだ線の中央付近にペダル軸の中心線が通る位置が理想とされる。人によってペダリングの癖や好みもありますが、正しいペダリング技術を身につけるためには正しいクリートの位置にする必要があります。クリート位置を一度もいじったことがないという方は、試しに数ミリ前後や左右に動かしてみてください。ペダリングのフィーリングが大きく変わるはずです。まずは基本の位置にあわせてそこから少しずつずらしてみて一番ペダリングがしやすい位置を探ってみてください。

 

やっぱり試行錯誤

 文章だけでポジションの説明をするには限界があるので、とても大雑把な内容となってしまいました。実際には自転車の用途や乗り方、年齢・体力、などさまざまな要素を話を進めていく中でその人それぞれに合ったポジションをご提案しますので、気になる方はご相談ください。

 また、「ポジションは1日にしてならず」です。乗り込んでいくにしたがって徐々に煮詰められていきます。しばらく乗らないでいると、今までのポジションが合わなくなったりもします。迷宮入りしてにっちもさっちも行かなくなってしまったら、もう一度基本に立ち返ることも忘れてはいけません。そしてある程度は「体を自転車に合わせる」ことも時には必要です。より理想となるポジションを得るためには、体幹を支える筋力と柔軟性、そしてペダリングスキルを鍛えなくてはいけません。

 

text■塚田